「ぼくらの」を見終わったあとにいろいろと調べると原作ファンからは原作からの改変が大きいと不評のようでした。しかも監督が自分は原作が気に入らないから変えたと公言しているとのこと。
これはちょっと意外でした。子供たちがほぼ全員死ぬと言うストーリーなので、原作を知らない人間にはあまり改変されたという違和感を感じなかったからです。よく考えるとたしかに違和感があったのは、唐突にでてきたヤクザと子供たちを見守る女性の軍人の犬死とも言える死の部分です。ここはやはり原作にはない改変部分でした。
正直、他の部分はそんなに違和感を感じませんでした。最後に生き残った一番小さい少女が歴史の証人として語り継いでいこうとするエンディングは救いのないドラマのかすかな灯りでした。(最近の山田尚子監督の「平家物語」と同じパターンです)
でも、原作ではその少女も戦って死んでいるそうです。それを知ってああ、なるほどと思いました。小さな少女まで含めて全員死んでしまうのはあまりにも救いがないと言うことで監督が書き換えたのでしょう。登場人物がほぼ全員死んでしまう作品といえばすぐにおもいだすのはアガサクリスティの「そして誰もいなくなった」です。
この作品は最後はほんとうに全ての登場人物が死んでしまい呆然としてしまいます。ですので何度も映画かされていますが、そのうちのいくつかでは結末が改変されていて、最後に一組の男女が生き残ります。実は私はその映画を最初に見ていたので原作を読んでびっくりしました。その映画と原作では訴えたいこと、つまり人間は信じ合えるのか、そうでないのか?が全く異なってくるからです。映画監督は人間が信じ合えない結末があまりにも耐えられなかったのでしょう。
クリスティがそんな小説を書いた理由はよくわかりませんが、おそらく名探偵が最後に犯人を名指しする定番の探偵小説を書くのに嫌気がさしていたのではないかという気がします。「ぼくらの」の原作者もたぶん普通のものと違うものを描きたいという気持ちが強かったのでしょう。
「ぼくらの」の監督もやはり原作の結末には耐えられなかったのでしょう。なので原作を改変し救いのあるエンディングにした気持ちがよくわかります。(つづく)