トップガンのよさのベースは全く気を衒わない王道派のストーリー展開。それも飛行機映画の王道。具体的には1955年の「暁の出撃」とか1964年の「633爆撃隊」が原典でしょう。どちらもイギリス空軍もので前者はアブロ・ランカスター爆撃機が、後者はデハビランド・モスキート戦闘爆撃機が主人公です。
「暁の出撃」ではドイツ工業地帯の電力を支えるダムを破壊するために19機のランカスターに新しいダム攻撃用の爆弾を積んで訓練を重ねてドイツルール地方のダムを夜間爆撃します。「633爆撃隊」ではナチスのロケットの燃料の工場を爆撃するために訓練を重ねてフィヨルドの地形にそって飛行して攻撃します。特に「633爆撃隊」は後世の飛行機映画、SF映画に与えた影響は絶大でスターウオーズのデススター攻撃でもオマージュされています。
「633爆撃隊」のストーリーは、ドイツ軍のロケットの燃料工場がフィヨルドの断崖絶壁の中に作られているという情報からはじまります。厚い岩盤で守られているので高空からの爆撃は効果がなく、低空で爆撃しようとすると対空砲火にやられてしまう。それでも地形をよく調べるとピンポイントで断崖を崩せるポイントが発見され、そこを集中して何発か命中弾を与えれば工場を完全に破壊できるらしい。ノルマンディー上陸が3週間後に迫っていて、その前に叩かないといけないので3週間の間、厳しい体調のもと特訓が行われます。その間にはバーでいろんな人間模様が・・・そしていよいよ攻撃のときが決ます。レジスタンスに対空砲火を潰してもらう予定が失敗してしまい対空砲火は生きています。でも全機フィヨルドの複雑な地形に沿って飛びながらピンポイント爆撃を敢行。何発かが命中し遂に工場の破壊に成功します。でも対空砲火と敵戦闘機に次々に撃墜され、隊長機も不時着。
ここまではトップガンマーベリックの説明かと思うくらいそっくりです。しかし633爆撃隊は結局全機未帰還で隊長も戦死してしまいますが、ハリウッド映画ではそれは許されずまったく別のストーリーに。我らのトム君は不時着してもなんとかしてしまいまうところからはミッションインポッシブルのノリですね。でも、それがこのコロナで疲れた人の心にぐさっと刺さったようでまだまだヒットは続きそうです。
飛行機映画的に言うと、モスキートとF/A-18の親近感です。どちらも複座の戦闘爆撃機(F/A-18は短座もありますが、今回は半分は複座)というところ。やはり複座はパイロットの物語を描きやすいですね。ファントム無頼もそうだったし。どちらの映画も実機を使って撮影しているところも同じです。(ただし633爆撃隊は操縦席のシーンはもちろんスタジオで撮っているのでそこの臨場感はマーベリックには全く及びませんが)
マーベリックを見るといろんな飛行機映画を見直してたくなります!