普通アニメで描かれる軍部の上層部は現場の実情をしらず冷酷無比な命令をだす悪者として描かれることが多い。ドラマでも同じで「事件は現場で起こってるんだ」と担当者が上層部をなじって終わるパターンだらけ。ただ稀に逆にとても部下思いで情に棹した決定をする理解のある上司がいることもあります。この場合は正義の味方を助ける良い人という設定です。
いずれにしても非現実的な話です。ほんとうに現場を無視して異常な命令だけを出し続けていたら組織は崩壊するでしょうし、温情だけで命令していては成果がでないのは必定。
この幼女戦記では前線の描写の時間に近い時間をかけて軍上層部の動きが描かれます(それそのものが普通と違う)。参謀たちが会議で苦悩しながら作戦を決定していきますが、「悪者」ではないし、でも決して「良い人」でもありません。場合によっては非情な決断をするし、ときには兵士のことも考える。純粋に国家が勝利するために働いています。
ある意味当たり前のことなのですが、いままでその当たり前の描写ができているアニメはほとんどなかったことを考えれば驚くべき描写でした。
ちょっと笑えたのは会議室がタバコの煙で溢れていてタバコが苦手な(そりゃ9歳だから当然ですが)主人公のターニャが閉口するというところもリアリティがありました。まあ魔法使いがでてくる物語でリアリティもなにもないのですが、そのようなリアリティが魔法使いの戦いをなんの違和感もなく見せています。ここまで軍事を描いたアニメはほかにはまったく存在しないでしょう。