STORY
祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり・・・で始まる平家物語を重盛とその息子たち(維盛、資盛、清経)、それに徳子を軸に琵琶弾きの少女の目を通して描く。
◆平家物語 全11話(2021)
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REVIEW
物語の冒頭で原作にはない琵琶弾きの少女がでてきてちょっといやな予感がしました。原作をいまの若い人にも親しんでもらうように変な改変がされているのではないかと心配したのです。しかし心配は不要でした。この少女は未来を見ることのできる目を持っているのですが、あくまでも歴史を見る傍観者。話は原作に忠実に進んでいかいます。
うかつなこと当初は気がつかなったのですが、監督は山田尚子、脚本は吉田玲子という京アニで多くの傑作を作り出したコンビでした。このコンビの京アニ作品と同じように、物語は抒情的にときには淡々と、時には悲哀を帯びて進みます。途中からすっかり見入ってしまいました。敦盛と熊谷直実の戦い、壇ノ浦の戦いは800年の歴史を誇る物語の伝統に恥じることのない見事な描写でした。最後の後白河法皇と徳子との対話が心に残ります。
琵琶弾きの少女を登場させて、この少女が維盛たちと子供の頃からの付き合いがあるという設定が、この物語の語り部となる意味を深くしています。驚いたのがこの少女の琵琶法師の歌が声優自身が歌っているということ。この声優は幼女戦記で全く異なるキャラクターを演じていて、その能力の高さに驚きます。
この作品はもちろんSFでも道探求ものでもないのですが、少女が未来が見える目をもつというSF的な設定があるのでスコアをつけてみました。
総合 | 総合評価 | 82 | 物語はいまさら点をつけるまでもないが、11話で抒情的に描き切った見事な作品 | |
A | テーマ性の高さ | 8 | 諸行無常 | |
B | シナリオ・演出の良さ | 9 | 予備知識があまりない人にも共感が持てるようになる演出が素晴らしい | |
C | キャラクターの魅力 | 7 | 高野文子の独特な絵だが登場人物が描き分けられていて物語の理解しやすさにつながっている | |
D | 絵の美しさ/作り込み | 8 | 精緻さと簡素さと抒情性とダイナミクスとのバランスがよい | |
E | 感動度 | 8 | しみじみとした感動 | |
F | 癒し度 | 6 |