1. ホーム
  2. アニメ_”道”探究
  3. 音楽アニメの心の声

”道”追求アニメの定番の一つは音楽もの。最近「4月は君の嘘」をみ始めたので、ちょっと音楽アニメはどうあるべきかを考えてみました。音楽アニメの定番は音楽をひたすら追求する主人公たちに感情移入し、最後の演奏でカタルシスを得るという流れです。こういう音楽アニメというと、「のだめカンタービレ」、「ピアノの森」、「この音とまれ!」そして「響け!ユーフォニアム」があげられます。

実は似たような音楽アニメ、ドラマでも大きく違う点がひとつだけあります。前者3つのアニメは主人公たちが演奏しているときに、評論家やライバルや観客が「ああ、なんと芳醇な響き」とか「音が溢れ出てくるようだ」とかありとあらゆる表現を駆使して感想を心の中で述べてそれで視聴者に同感を得ようとしています。まるでグルメアニメのように。

それに対して、「響け!」の場合は演奏中は一切観客の心の声は聞こえてこず、演奏の判断は視聴者に委ねられます。これは製作者にとってはとても怖いことだったと思います。どんなにいい演奏の録音をだしてもそれが視聴者が理解してくれるかどうかわからないからです。

トランペットのソロ奏者を決める決戦オーディション。二人の奏者の緊迫の対決ですが、その音楽には言葉ではなにも説明されません。しかも片一方が明らかに下手な演奏(わざと下手に演奏して録音する)ではありません。どちらも普通に聞くと素晴らしい演奏。でもわずかに主人公のほうが音に伸びと輝きがある。それを視聴者を信じて演奏だけで語らせています。実際は負けた奏者の演奏は上手なアマチュア奏者、勝った奏者はプロの奏者が録音していたそうですが、素人の耳にはほとんど差がないように聞こえます。でもたしかにほんのわずかに勝った奏者の演奏の方がいいように聴こえます。

「響け!ユーフォニアム」公式HPより

第1シーズン最終回の決勝戦での演奏も全く同じ。なんの言葉の説明もなく指揮者が棒を振り下ろしてから、最後にフィニッシュするまでの演奏で観客や審査員の心の声はありません。そのまま審査員の発表のシーンに繋がり、審査結果をまつ主人公たちと全く同じ気持ちで審査結果を待つことになります。そしてそれが最後のカタルシスにつながります。視聴者を信じた製作者の挑戦が成功した素晴らしい作品です。

というようなことで「響け!」は目下のところ私にとって音楽アニメとして他のアニメと一線を画すアニメなのです。さて「4月」はどうでしょうか?

「響け!ユーフォニアム」公式HPより